ウィルスが除去できる浄水器を通して、日本だけでなく、2019年からはインドネシアでも生活の安全を守るための水に関する仕事をしています。今月から、その活動を通じて経験したことや水に関する情報などをお伝えしていきます。
予想以上に悪いインドネシアの水質
水質調査のためインドネシア各地の民家の水道水を検査したことがありますが、私はその結果に衝撃を受けました。検査対象の40%を超える家から病原性大腸菌やヒ素などが検出されたからです。大腸菌は食中毒のような症状を引き起こす原因になるだけでなく、それ以外にも多くの問題があります。中でも最大の問題はウイルスです。水が原因となるウイルス感染はいくつもありますが、ウイルスは単体では増えることができないため大腸菌などのバクテリアに寄生していることが多くなっています。2017年に東ジャワの学校でA型肝炎ウイルスによる集団感染が発生した際も水道水から大腸菌が検出され、保健所は飲料水が原因のウイルス感染であると発表しました。
また、浄水器を試験的に利用してもらった日本人の住むアパートメントでは、建物全体である程度の浄化処理をしているにもかかわらず、2カ月足らずで水の出が悪くなりました。確認してみるとフィルターが目詰まりを起こしており、これまでに見たことのない真っ茶色な状態になっていました。
その他、多くの水質試験を通じてわかったことは、インドネシアは水質が不安定だということ。水質検査をした時点では日本の水質基準並みの結果だったとしても、それが常に続くとは限らないのです。とある飲食店は、水質検査では非常によい結果でしたが、その後、浄水器を設置したところ、新しい白色のフィルターの表面がものの数秒で茶色に変色しました。これは、水を採るタイミング(時間や季節など)によって水質が大きく変化することを物語っています。
暮らしのための水
水の安全性は見た目では判断できません。しかし、使うたびに水質検査をすることもできません。インドネシアでは特に、飲み水だけでなく、お米研ぎ、野菜洗い、食器洗いなど、毎日の暮らしに欠かすことのできない水に対する可能な限りの配慮が必要です。

角田裕哉(かくた ゆうや)
マルチピュアジャパン(株)での浄水器業界経験10年余り。安全快適な生活に欠かせない「安心な水」を、日本のみならずインドネシアでも提供するべく、水のプロフェッショナルとして日々奔走中。
※2020年4月号掲載