プアサ(断食)というと年に一回の断食月のイメージが強いが、実は断食には2種類がある。一つがファルドゥ(義務として行わなければならないもの。断食月の断食)で、もう一つがスンナ(行うことが奨励されるもの)だ。今月は、スンナの断食についてご紹介する。
スンナの断食の種類
スンナの断食はモスリムにとって必須ではないが、行うとアッラーから報酬が得られる。また、健康目的や精神状態を良好に保つためにも行われている。スンナの断食には7種類ある。
①月曜日と木曜日の断食
月曜日と木曜日の断食は、預言者ムハンマドによって強く勧められている。理由は「月曜日と木曜日にはさまざまな証書が(アッラーから)提示され、断食中に証書が示されるのは好ましい」からだ。また、月曜は預言者が生まれた日であり、木曜は啓示が送られた日でもある。
②アラファの断食(ズル・ヒッジャ9日の断食)
アラファの断食はイスラム暦12月の9日に行われる。メッカ巡礼(ハジ)をしていない人はこの日に断食をする。アラファの断食は1年間の断食に値するといわれる。
③ズル・ヒッジャ1〜9日の断食
イスラム暦12月のズル・ヒッジャ月の最初の10日間、モスリムはdhikr(アッラーに賞賛する)、istigfar(アッラーを思い出す)、礼拝・祈り、喜捨をいつもより増やすことを奨励されており、中でも断食は強く勧められている。
④イスラム暦1月10日の断食
イスラム暦1月10日の断食は、アッラーが一年間のすべての罪を許してくれることから、断食月の断食に次ぐ断食とされている。
⑤シャワルの断食
シャワルの断食はイスラム暦10月の6日間行われる断食だ。連続で実施してもいいし、一日単位でやってもいい。重要なのは、イスラム暦10月の間に6日行うという点だ。断食月の他にシャワルの月に6日間断食すると、一年間の断食に値するとされる。

こちらの記事もおすすめ!
【モスリムの暮らし】第18回 礼拝用の服と小物
⑥Ayyamul Bidhの断食(アッヤムル・ビッド)
Ayyamul Bidhの断食は、イスラム暦の毎月13日、14日、15日に行うもの。月に3日断食すると、一年間の断食に値するとされる。
①〜⑥の断食の方法は断食月の断食と同じで、必ずニーア(意志表明)を行ってからサフール(朝食)の食事をする。サフールは日の出前(午前3時頃からイムサック(スブーのアザーン前)まで)に取り、それから午後6時頃の日没まで飲食しない。日が沈んだら断食明けとなるので、飲食する。
⑦預言者ダウドの断食
預言者ダウドの断食は、ファルドゥや上記6つのスンナの断食と方法は同じで、午前3時頃からイムサック(スブーのアザーン前)までにサフールを取る。違う点はニーアを行うタイミングだ。他の断食では必ずサフールの前に行うが、預言者ダウドの断食ではスブーや日の出後に行ってもよい。
月木の断食に挑戦中!
断食はモスリム以外の人でも実施可能ということで、モスリムの知人に勧められて7月から月木の断食を実行している。知人の説明によると断食を行う目的は実施する人が自分で決めてよいそうだ。何かの願掛けをして行う日本のお茶断ちに近い部分があるのかもしれない。個人的なことなので私の月木断食の願掛けの内容を書くことは控えるが、断食を始めてから半年、心身ともに健やかに過ごすことができている。十分ありがたい。
※2020年12月号掲載