インドネシアはイスラム人口が約2億3000万人で、世界で最もイスラム人口が多い国といわれており、世界最大のハラール市場として近年、日本や世界各国から注目を集めている。
ハラールとは?
ハラールはアラビア語で「許されている」という意味だ。反対語に「禁じられている」を意味するハラームがあり、ノンハラールまたは非ハラールと表現されることもある。ハラールやハラームは食品だけでなく、物や行動などモスリムの生活全体を対象にした言葉だ。
食品におけるハラール
ハラール食品は、野菜、果物、魚、卵、牛乳、イスラム教独自の方法で屠殺(とさつ)した動物の肉とその加工食品などだ。ハラームを知ることでハラールであるかの判断をすることもできる。ハラームは概ね以下の通り。
▪死んだ動物の肉や、イスラム教独自の方法で屠殺されていない動物の肉
▪アルコール類(ビール、日本酒、ワインなどの飲料用アルコール、醤油、みりん、味噌などアルコールを含む食品や調味料。ただしアルコール成分が1%以下ならOK)
▪豚(肉の他、豚脂、ソーセージ、ゼラチンなどの加工品も含む)、犬
▪血液(生のものやブラッドソーセージ)
▪かぎ爪や長く鋭い牙を持つ動物
▪ワニ、カメ、カエルなどの両生類や爬虫類
▪かぎ爪のある鳥、捕食性のある鳥
▪ネズミ、ムカデ、サソリなどの有害生物
ハラール食品でもハラームに混ざったり接触したりするとハラームとみなされる。また、豚肉メニューがあるレストランでは豚を使っていないメニューでもハラールかどうかを疑われる。豚肉を切るのに使った包丁やまな板を別の料理にも使っている可能性があり、また、豚カツを揚げた油で調理した野菜や鶏肉はハラールではないからだ。アルコールに関しては、イスラムの教えでは飲酒で酔った場合の害が指摘されている。そのためアルコールを飲まないモスリムが多い。調理の際にワインや酒などを使用すると、食材そのものがハラールであってもその料理はハラールではなくなる。ただし、消毒用アルコールの使用は一般的に行なわれている。
なお、豚肉を知らずに食べてしまった時は許される、豚料理以外に食べるものがなく食べなければ死んでしまうような状態であれば食べてもよい、という解釈もある。

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ハラールの表示
モスリムがレストランやスーパーで誤って禁止されている食品を食べたり、触れたりすることがないよう、ハラール認証を受けた食品やレストランの入り口には「ハラールマーク(認証印)」が表示されている。インドネシアのハラール認証はインドネシア・ウラマ評議会(MUI-Majelis Ulama Indonesia)によって行われている。なお、ジャカルタの日本食、中華、韓国料理店などでハラールマークがない店も、豚肉や豚油を使っていない場合はそのことを示す「NO PORK NO LARD」の表示がある場合が多い。

犬の唾液は不浄
モスリムにとって犬の唾液は不浄とされ、触れることは許されていない。万が一、体に付着したら7回洗わなければならない。犬の飼育は番犬や狩猟目的であれば許されるが、ペットとして楽しみのために飼うことは望ましくないとされる。そのような理由から、犬を飼っているモスリムはあまりいない。
ハラールに関するモスリムへの配慮
ジャカルタやその近郊で日本人が仕事や生活をする場合、周囲にいるインドネシア人の大半がモスリムというケースがほとんどだ。そのため、ハラールの面で配慮する点がある。たとえば、会社のローカル社員と食事をする場合はハラール認証のある店を選ぶ、日本のお土産を渡す場合は豚由来の成分が入っていないものを選ぶなどだ。また、メードを雇う際、犬の世話や調理で豚肉に触れることができるかの確認も必要だ。
※2019年9月号掲載