明けましておめでとうございます。今年こそ国内海外問わず、自由に旅行したいものです。本年もインドネシア鉄道通信をよろしくお願いします。冒頭画像の通り、2021年のクリスマスから新年にかけて、KAIの機関車と客車には季節ラッピングが施されています。2020年のクリスマスから始まったこの企画はちょうど1年を迎え、果たして継続されるのか注目されていましたが、昨年の緑色からエンジ色に変わり、再登場となりました。季節感のないインドネシアでこのようなデコレーションはうれしいですね。
さて、2022年、インドネシアの鉄道にはどんなニュースが控えているのでしょうか。今回は、2022年の注目鉄道ニュースをピックアップしてご紹介します。予定は未定のインドネシアなので、★の数は筆者主観での2022年内達成可能度を示しています。
① KAIガルット線チバトゥ~ガルット間復旧開業 ★★★★
温泉で有名なバンドンの裏座敷、ガルットへ延びる約19㎞の線路が復活します。この区間は1983年に運行休止、事実上の廃線状態でしたが、数年来にわたって再活性化工事が進められてきました。実は既に完成しており、2020年2月に開業する予定でしたが、コロナウイルス感染拡大の影響でペンディングにされていました。ジャカルタのガンビル及びパサールスネンから直通の特急・急行列車も運行予定なので、ガルットがぐっと近くなります。開業が楽しみです。
② LRTジャボデベック開業 ★★★
ジャカルタ中心部、ドゥクアタスとブカシティームル(ジャティムルヤ)、そしてチブブール(ハルジャムクティ)を結ぶ計約44㎞の郊外型の高架式LRTが2022年8月17日に開業と発表されています。高速道路沿いの高架橋には既に車両が並んでおり、目にした人も多いでしょう。自動運転、そしてインドネシア国産技術での着工をうたい、政府の期待を一身に受けたプロジェクトですが、先日、作業員のよそ見運転から車両を損傷する追突事故が発生。また、工費が増加しており、急遽国家予算が追加投入されるなど、本当に2022年度中に開業できるのか不透明な部分もあります。

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③ ジャカルタ首都圏の公共交通機関の運営体制再編 ★★★
現在、ジャカルタ首都圏には、KCI、Railink、MRTJ、LRTJ、それにバスウェイのTJと複数の会社が存在します。さらに、来年からはLRTジャボデベックを運営するKAIも加わります。Flazzや、e moneyなど、銀行発券の電子マネーなら現状でも各社共通で利用できますが、2022年上半期までに支払いシステムを統合し、統一運賃を導入することが計画されています。乗り継ぎが多いほど割高になる問題が解消されるのは大きなメリットです。しかし、コロナ禍で各社減収減益で、システム移行が計画通りにいくのかは不明です。

④ ジャカルタ~バンドン高速鉄道第一編成が到着 ★★★★
紆余曲折ありながらも建設が進んでいるジャカルタ~バンドン高速鉄道。2022年のG20サミット開催に合わせ、習近平国家主席を高速鉄道の試乗に招待するという話もありますが、現在の工事状況を見ると、さすがに全区間の乗車は厳しいのではと思います。車両基地からバンドン(トゥガルルアール)、せいぜいパダラランまでが限度でしょう。しかし、第一号編成は既に中国の車両工場で報道公開されており、検測用のドクターイエロー編成と共に、まもなくインドネシアに向けて船積みされる模様です。路線の開業はまだ先ですが、一足先に車両だけ到着するのは間違いないでしょう。

⑤ KAIスカブミ線ボゴール~スカブミ間複線化 ★★
週末のレジャーで人気のあるボゴール~スカブミエリア。この地区を経由し、パダララン、バンドンへ至る路線は、現在のメインルートのチカンペック、プルワカルタ経由よりも古い歴史があります。しかし、設備が古く、速度が低くなっており、運転本数も限られていました。そこで、現在、既存のレールを全てはがした上で、ボゴール~スカブミ間約57㎞の複線化工事が進んでいます。コロナ禍で列車が約2年弱、全て運休になったことで、工事のペースが上がっており、2022年内に完成する可能性もあります。以前はチケット入手が困難だっただけに、早期完成を望みます。

高木聡(たかぎ さとし)
神奈川出身。2012年7月よりジャカルタ在住。
中古電車がジャカルタに渡ったことをきっかけに2009年にインドネシアを初訪問し、当地の魅力にハマって移住。横浜線は物心ついた時から当たり前の存在。今はその中古車両に揺られ通勤するという不思議な日々。
※2022年 1 月号掲載