もしこれが本当に科学的根拠に基づいているなら世界的発明といえるインドネシア独自の新型コロナウイルス検査GeNose C19、通称グノース検査。ガジャマダ大学が開発した、呼気に含まれる成分をAIが判定するという技術で、従来の迅速抗体検査に比べて検査行程が少なく、大幅なコストダウンとスピードアップを実現しています。しかし、保健省からの許可は受けていますが、鉄道駅を中心とした公共交通機関乗車前の検査以外に広まっていません。鉄道運賃が航空に比べ安いため、チケット代に対する迅速抗体検査費用が割高になり、乗客離れを起こしていたインドネシア鉄道(KAI)を救済するために導入された面もあるわけですが、駅では引き続き従来の迅速抗体検査も行っています。乗客に判断を任せていることからも、グノース検査結果の信ぴょう性は保障されないというのが実態でしょう。6月下旬現在、一部の空港と、鉄道では全国の主要65駅に広まったものの、スカルノハッタなど主要空港では引き続き迅速抗体検査のみの実施となっています。「グノース検査で偽陽性でも出たら」と、これまで長距離移動には検査不要のバスばかり使っていましたが、それでは鉄道レポーターとしての面目が立たないだろうと、この度グノース検査に挑戦してきたのでご紹介します。ジャカルタ地区ではガンビル及びパサールスネンで行われており、費用は3万ルピアです。
グノース検査の流れ
駅での各種検査は乗客向け特別価格で提供されているため、鉄道チケット保有者以外は受けられません。まずはチケット発券機に予約番号を入力し、チケット本券を発行します。次に検査会場に入ります。入る時にチケットの確認があります。パスポート等のIDチェックはなく、グノース検査か迅速抗体検査か質問され、どちらかの整理券を受け取ります。その先でグノースの列と迅速抗体検査の列に分かれるので、グノースの列に並びます。これは会計の列で、私が入った時は誰も前におらず、整理券を渡し、会計を済ませました(現金払いのみ)。会計時にチケットを提示しますが、e-HACの入力、またIDチェックもなく拍子抜けです(以前、迅速抗体検査のときはIDを提示しました)。

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会計後、息を吹き込む検査袋を渡され、QRコードのステッカーが添付されたチケットも返却されます。このステッカーがミソで、チケット情報(インドネシアの鉄道チケットは航空機同様、個人情報が入力されています)をスタッフが会計時にスキャンし、これとQRをリンクさせることでIDチェック及び入力の時間を省略しているのです。その後、検査窓口に進みます。窓口は多数用意されており、駅の混雑具合の割にほぼ待ち時間ありませんでした。他の駅で見学した時は事前のレクチャーがあり、検査窓口で吹き込むというスタイルでしたが、とにかく密を生み出さず、回転率を上げることに注力していると見え、並んでいるうちに各自息を吹き込んで窓口のスタッフに渡すだけであっけなく終了。てっきりスタッフの指示を仰ぐものだと思っており、もたもたしていると「早く出してください」と言われ、ろくに息も吹き込めず回収されました。ここまで正味5分足らず。あとは結果を待つのみですが、結果は先ほどチケットに貼られたQRコードを読み取って自分で確認するだけです。検査場からはさっさと追い出されるので、あとは待合室なりカフェなりで待ちます。試しに5分後にチェックすると既にNegativeと出ており、これまた早い。そして改札時は陰性証明のスマホ画面を見せる必要もなく、駅員がチケットのバーコードを読み取るだけでした。
グノース検査の正確性はさておき、正直、よくできたシステムで、KAIのチケット情報とリンクさせているというのも高評価です。なお、上記検査方法は鉄道駅での一例であり、他の駅や、チケット発券が検査後となる空港の場合とは手順が異なりますのでご注意ください。





高木聡(たかぎ さとし)
神奈川出身。2012年7月よりジャカルタ在住。
中古電車がジャカルタに渡ったことをきっかけに2009年にインドネシアを初訪問し、当地の魅力にハマって移住。横浜線は物心ついた時から当たり前の存在。今はその中古車両に揺られ通勤するという不思議な日々。
※2021年7月号掲載