9月1日、ジョグジャカルタ市内とジョグジャカルタ新国際空港(約40㎞)を結ぶジョグジャカルタ空港鉄道が開業。早速様子を見てきました。
これまでの空の玄関だったアジスチプト国際空港(JOG)の発着便を2020年3月に完全移管、本開業したジョグジャカルタ国際空港(YIA)。明るく開放的で、十分なキャパシティーを持つようになりました。一方、ジョグジャ市内から40㎞以上も離れているという問題も抱えています。高速道路は開通しておらず、一般道経由だとタクシーで最低1時間半、ダムリの空港バスでは2時間弱かかります。従来の空港が市内から30分弱だったので、なおさら遠く感じます。
この問題を解決するため、2019年5月から、空港にほど近い国鉄KAIウォジョ(Wojo)駅からバスでの連絡を暫定的に行ってきました。ウォジョ駅はそれまで長らく営業を休止していましたが、これに合わせて普通列車と一部の長距離急行列車が停車、そして空港連絡快速Bandara YIAの運転が開始されました。しかし、本数は少なく、乗り継ぎ時のロスタイムや、バスと鉄道で2度運賃が徴収される割高感もあり、決定的なメリットがない状況でした。そんなことから、鉄道の空港ターミナル乗り入れが期待されていました。
今回開業した空港鉄道は、ウォジョ駅手前のクドゥンダン信号所から分岐し、空港ターミナルまでの約5.4㎞の全区間高架路線です。ジョジャカルタ~クドゥンダン信号所間は従来通りの在来線を走ります。新線区間は2019年12月に着工、国家予算1兆1千億ルピア(約85億円)が投じられており、これの完成により、空港とジョグジャカルタ駅は最速39分で結ばれることになりました。運賃は9月中旬現在、開業記念プロモ価格の2万ルピアです(正規運賃は未発表)。この空港鉄道はKAI子会社のRailinkではなく、KAI直轄のため、乗車当日に公式アプリKAI Accessの他、駅窓口で現金でのチケット購入が可能です(現在、前売りはなし)。
ジョグジャカルタ空港鉄道は、アフターコロナの起爆剤とすべく、独立記念日の8月17日に華々しく開業予定でした。しかし、PPKM(活動制限)の延長により関係者のみで開業式典がひっそりと開かれた後、月末まで招待客だけを乗せるソフトオープンの状態で運行を続け、8月27日にジョグジャカルタ特別州知事ハメンクブウォノ10世、フットパンジャイタン海洋・投資調整大臣、ブディカルヤ運輸大臣の出席のもと、開業宣言がなされました。しかし、引き続きのPPKM下で、9月1日から一般客の利用も解禁されましたが、就業登録証明書(STRP)所持者しか乗車は認められず、ジャカルタからの訪問客は自ずと乗車不可。よって、私も外から眺めるしかなかったのですが、PPKMの規制緩和を受け、9月14日からワクチン接種及び行動追跡アプリ「PeduliLindungi」でのQRコードスキャンで乗車が可能になりました。ただし、運行本数は大幅にカットされており、9月17日からは、下記の時刻で1日4往復運行されています。将来的には30分間隔程度での運転になる予定です。
空港(YIA)発 | 9:25・11:57・14:55・16:49 |
ジョグジャカルタ発 | 5:00・ 7:20・10:19・14:02 |

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乗り場(空港側)
地上の到着ロビーを抜けたら2階に上がり、駐車場へつながる通路を進みます。駐車場手前に空港鉄道駅の入り口があります。
乗り場(ジョグジャカルタ)
マリオボロ通りのある南口の近郊列車用の小さい駅舎側が空港鉄道の乗り場です。窓口のある建物には3つ扉がありますが、中央が空港鉄道の切符売り場、向かって右が空港鉄道専用改札です。南口にはKCIウォジョ方面の普通列車用有人改札、KCIソロ方面の自動改札が混在しているので、注意が必要です。





高木聡(たかぎ さとし)
神奈川出身。2012年7月よりジャカルタ在住。
中古電車がジャカルタに渡ったことをきっかけに2009年にインドネシアを初訪問し、当地の魅力にハマって移住。横浜線は物心ついた時から当たり前の存在。今はその中古車両に揺られ通勤するという不思議な日々。
※2021年 10 月号掲載