歯科医院と病院が異なることもあり、私たちは歯の健康と身体の健康とを別に考えがちです。しかし口腔(歯、唇、舌)は体の一部で、毎日摂取する食べ物が入る入り口でもあることから、口腔の健康が全身の健康に大きな影響を与えます。
今回は歯を失う原因の第一位であり、全身の疾患にも影響を与える歯周病についてお話をしたいと思います。
1.口と全身の関係
口腔は、
1.食べ物を細かくして食べやすく、消化しやすくする
2.発音を作る
3.表情を作る
4.体の姿勢やバランスを保つ
5.脳に刺激を与える
など私たちが生きていくうえで重要な役割も担っています。
かつて虫歯や歯周病は口腔内だけの病気と思われていましたが、最近では虫歯や歯周病が原因で全身の病気(糖尿病・心疾患・脳梗塞・肺炎・動脈硬化・骨粗鬆症・早産・低体重児の出産など)を引き起こすこと、また、歯の治療(神経を抜く・歯を抜く)をした個所によって下記のように病気になる臓器がある程度決まっていることも明らかになってきています。
・下顎3番・4番・5番:生殖器の病気(子宮筋腫・生理痛・卵巣嚢腫・子宮がん)
・上顎1番・2番:腎臓疾患(急性腎炎・腎機能障害)
・下顎6番:大腸がん、大腸ポリープ、下痢・便秘
・親知らず:心臓・小腸

2.日本人に最も多い病気の一つ、歯周病
実は歯周病は、日本人にもっとも多い病気の一つです。
厚生労働省の「歯科疾患実態調査」によると、45〜54歳の中年層の80%以上で、25〜29歳でも70%以上で歯周病の兆候が認められます。
しかし、これほど歯周病の人が多いのに、それがどんな病気なのかはあまり知られていません。
歯周病を一言で表すなら「細菌の感染が引き起こす、歯の周りの炎症性疾患」です。口の中には、およそ300~500種類程度の細菌がおり、歯磨きが不十分なとき、糖分を多く摂ったときなど、歯についた食物のかけらや糖分が細菌たちのえさになります。多くのえさがある状態が続くと、細菌たちはネバネバした物質を作り出し、これが歯の表面にくっついていきます。そのままの状態が続くと、ネバネバした物質は、歯垢となります。
歯垢は粘着性が強く、強いうがいでも落ちません。歯垢1㎎の中には、10億個もの細菌がいるといわれており、これが歯周病やむし歯の原因となります。そのうち歯垢は固くなり、歯石と呼ばれるようになります。歯垢や歯石が歯についたままでいると、歯と歯茎の境目に炎症が起こり、赤く腫れたり、歯磨きの時にうっすらと出血したりすることもあります。さらに進行すると、歯と歯茎の境目が深くなり、歯周ポケットができて、歯を支えている骨が溶け、いずれ歯が抜けることになります。
ところで、歯周病の原因となるのは、「歯周病菌」とよばれる細菌です。これらの細菌は、毒素や炎症を引き起こす物質を生み出し、歯茎の毛細血管の中に入り込んで全身の各器官へと広がり、さまざまな疾患へとつながっていきます。
歯周病に関係すると考えられている全身疾患には、動脈硬化などの血管系の疾患(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞)、糖尿病、骨粗鬆症、早産、低体重児出産、誤嚥性肺炎などがあげられます。以前から歯周病は糖尿病の合併症のひとつといわれてきましたが、最近では歯周病になると糖尿病が悪化するという逆の関係も明らかになってきており、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになりました。
3.歯周病を予防しよう
歯周病を招きやすい生活習慣は喫煙、ストレス、食習慣です。
特に、食習慣では下記に注意しましょう。
歯周病を招きやすい生活習慣は喫煙、ストレス、食習慣です。
特に、食習慣では下記に注意しましょう。
①炭水化物の過剰摂取
歯周病になる患者さんの食生活には明らかな特徴があり、ほとんどの方が「炭水化物が大好き」です。炭水化物をたくさん摂る方の歯の周りにはベットリと歯垢が付着していますので、炭水化物の過剰な摂取は控えるようにしましょう。
②カルシウムを控える(マグネシウムを摂取する)
カルシムの過剰摂取は、歯周病の原因となる歯石を作ります。また、余剰となったカルシウムを体外に排泄する際にはマグネシウムを必要とし、炎症を改善する働きのあるマグネシウムを体外へ排泄してしまいます。
③ビタミンCを摂取する
歯周病にかかった歯茎はコラーゲン線維が破壊された状態です。ビタミンCには「コラーゲン合成促進効果」があり、壊れたコラーゲン線維の再生を促し、歯茎を健康に保ってくれる効果があります。
④オメガ3系脂肪酸の摂取
オメガ3系脂肪酸には炎症を抑える作用があり、歯周病予防や治療に有効です。アメリカの研究ではオメガ3系脂肪酸の摂取が多いグループほど歯周病になりにくいという結果が出ています。糖尿病は「膵臓の炎症」ですので、このオメガ3が有効です。
歯周病は万病のもととなる実は怖い病気ですが、毎日の食生活を含めた生活習慣を見直すことで予防することができます。そして、歯周病を予防することで全身の病気を予防することにもつながります。たかが歯と軽く考えることなく、口と全身はつながっていることを意識することで、全身の健康につなげましょう。
この記事を書いたドクター

きずなクリニック医療アドバイザー 山下美重子先生
歯科医、分子栄養療法医。医療アドバイザーとして、ジャカルタの日系クリニックで長年の勤務経験がある。

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